以前はシティサイクルだけしか見かけなかった電動アシスト自転車でしたが、今では老舗ロードバイクメーカーなどからもe-bikeとして発売されるようになるくらいに、電動アシスト自転車は世界的に普及してきています。
個人的にもシティサイクルはもちろんロードバイクなどのスポーツ自転車の電動アシスト自転車にも興味のあるところなので、電動アシスト自転車(e-bike)の昨今の事情について考えてみました。
初めての電動アシストロードバイクであるヤマハのYPJ-Rが発表された当初の反応
ガチなサイクリスト達からはロードバイクの電動アシスト化は酷評だった
ヤマハが電動アシスト付きのロードバイクであるYPJ-Rを2016年あたりに発表した時のロードバイク界隈の人たちの反応は散々なものでした。
YPJ-R以前の電動自転車のイメージと言えば、シティサイクルだったり親子自転車であるママチャリなどが主流で、子育て世代のママか、ご老人の御用達自転車という印象でした。
そんなわけで、「しんどい部分も自転車の魅力」というような、ストイックなイメージのあるロードバイクの世界の人たちからすると「電動アシストで楽してる場合かよ」「ロードバイクに電動アシストなんて要らねえ」「ロードバイクが何のためにあると思ってるんだ(笑)」というようなものなので、ロードバイクに電動アシスト機能を付ける事が全くイメージできないものでした。
当然のように、ガチな自転車乗りの方々には、電動アシスト付きロードバイクは受け入れられるわけがありませんでした。
実際のところで、当初の価格は25万円程度で、けして安いものではなく、当時は105あたりのフルコンポーネントで組んだロードバイクが買える値段でしたし、電動自転車は車体が重たい(17kg程度)こともあって、一般的なロードバイク愛好家などからすると真逆の価値観の自転車だったわけです。
多くのサイクリストからすると、ヤマハがロードバイクに電動アシスト機能を付けたのか全く理解できず「ヤマハが変な自転車を作った」というような評価だったと記憶しています。
当時のネット界隈の評価を思うと「すぐに無くなる」「どこに需要があるか分からない」「恥ずかしくて乗れない」という感じで完全否定と言っても良いような状況でした。
僕自身も、当時のYPJの評価をこのブログで書いていますが、やはり否定的な意見です。
ヤマハの見通しは正しかった
もちろん、ヤマハも考え無しに電動自転車でロードバイク界に参入したわけではなかったようで、最初から予防線として「ガチなロードバイク勢は完全に相手にしていない」というような注釈を入れた公報も話題になりました。
それに対しても「じゃあ誰が買うんだよ(笑)」というような意見が多かったと思いますが、結果は現在のヤマハのe-bikeのラインナップを見ても判るように、電動クロスバイクのYPJ-Cなどを発表し、その後も順調に後継モデルや種類を増やすなどで、以前よりも活発に電動アシストスポーツバイクの展開をしており、当時の酷評を完全に覆している感じです。
そして近年はヨーロッパのロードバイクの老舗メーカーなどの相次いで電動アシスト機能を備えたロードバイクやマウンテンバイクを販売するようになり、これらをひっくるめたe-Bikeは、一般自転車だけでなくスポーツバイクの世界においても一大ジャンルにまで成長しています。
e-Bikeに参入したメーカー
● TREK
● Bianchi
● Panasonic
● ミヤタサイクル
● BESV
● BOSH
● CANYON
● benelli
● MERIDA
● GIANT
● Scott
● Shimano(コンポーネント)
● 小米 xiaomi
僕が調べた範囲なので、漏れているメーカーもあるでしょうし、これからe-bikeに参入してくるメーカーも沢山増えるものと思います。
今や、ロードバイクやマウンテンバイク、クロスバイクなどと同じように、電動スポーツバイクは、自転車メーカーには欠かせない一大ジャンルとなっています。
電動アシスト自転車で使用されれている駆動系について
国内の主な電動アシスト自転車はシティサイクルやママチャリです。
それらの自転車で使用されている駆動系やバッテリーに関してはヤマハとパナソニックが大きなシェアを占めていて、この2社がほとんどを供給しているようです。
なのでママチャリの分野ではヤマハ、パナソニック、ブリヂストン(ブリヂストンはフレームを供給)の三大メーカーがシェアを占めている状態で、新規参入が難しいと言われていたりもしています。
駆動系のパーツは上記の2社から仕入れる必要があるので、価格的なところで競争できないなどの理由があるようです。
一方で、電動スポーツバイクの場合だと少し状況が変わってくるようです。
国内メーカーの電動アシスト自転車に使用されている駆動系はヤマハが供給元として主導権を握っている感じではありますが、日本で流通している海外メーカーの電動アシスト自転車の場合はBOSHが高いシェアを占めている感じです。
電動アシスト自転車のマウンテンバイクとクロスバイクの立ち位置
もともと電動ロードバイクが先行して普及してきた感のあるe-bikeですが、現在ではロードバイクよりもクロスバイクや、マウンテンバイクなど、オフロード系のスポーツバイクの方が人気のようです。
この点はやはり自転車の性格の違いが出ているのかもしれません。
要するにロードバイクはあくまで速く走り、どこまでも自分を追い込むようなストイックなイメージ通りで、愛好家の方達も、わざわざロードバイクの電動化は望んでいないのかもしれません。
クロスバイクの場合は、トレッキングやハイキングのように、娯楽や趣味で自転車に乗り、気軽にサイクリングを楽しんでいる人たちが多いですから、自転車に乗っている感もありながら、負荷が軽減される電動アシスト自転車が受け入れられているようです。
マウンテンバイクの場合はダウンヒルと呼ばれる坂道を下ることがメインの楽しみだったりすることから、キツイ上り坂が楽になる電動アシスト自転車の方が、よりマウンテンバイクを楽しめるという部分で需要があるのだと思います。
スキーで言うところのリフト的な役割をしてくれるのが電動アシスト機能というところでしょうか。
電動スポーツ自転車の良いところ
電動アシスト自転車は坂道でも楽
電動自転車の恩恵を最も感じることができるのが坂道です。
延々と続く坂道でもサドルに座ったまま涼しい顔をして坂道を登ることができます。
電動と言ってもフルアシストではないので、多少なりに自転車を漕がなくてはいけませんが、よっぽどの坂道であったとしても、いつも通りにペダルを踏むだけでスイスイと坂道を登っていけるのです。
これは、サイクリングで景色を楽しみたいなど、自転車版ツーリングのような楽しみ方をしたい人にとっては大きなメリットです。
また、マウンテンバイクなどの場合は、坂道を登ることよりも、下ることがメインなので、無駄にキツイ坂道を登ることをしなくて良くなり、体力や時間を節約して、より自転車を楽しむことができるようになります。
電動アシスト自転車は逆風でも楽
電動自転車と言えば「坂道を登るのが楽」という感じで坂道での利用をイメージする人が多いと思いますが、実は坂道だけでなく逆風でも楽に進むことができます。
実際のところで自転車に乗っていて最も精神的に辛いのは、逆風で思うように走れない時じゃないでしょうか。
ロードバイクなどで坂道は苦しいながらも楽しみもあったりしますが、平地を走行する際に逆風だとテンションが下がってしまうんですよね。
電動自転車ならば、逆風の場合にも坂道と同じような感じで電動アシストが機能してくれるので、強烈な逆風の中でもスイスイ進めるというのはかなり快適です。
電動スポーツ自転車e-bikeの悪いところ
電動自転車には良いところもありますが、もちろん悪い部分もあります。
思いつく限り電動自転車の悪い部分を挙げてみましょう。
電動アシスト自転車は車体が重い
電動アシスト自転車は重たいです。
一般的な電動アシスト自転車に比べれば、電動スポーツ自転車はかなり軽量化はされているものの、それでも重量は20kg前後はあります。
電動アシスト機能があるので、走行時に重たさは関係が無いですが、持ち上げて移動させようと思うとちょっと大変ですね。
電動アシスト自転車は充電が必要
電動アシスト自転車は動力としてバッテリーを使用してるので充電が必要です。
バッテリーは小型軽量化と大容量化が進んでいますが、定期的に充電が必要なのは変わりがありません。
頻度は週に1回程度であっても、面倒な部分ではありますね。
電動アシスト自転車は価格が高い
電動アシスト自転車の価格は普通の自転車と比べると高くなります。
一般的によく売れるものは大量生産ができるので価格も下がる傾向にあるはずですが、かなり売れているはずのママチャリの電動アシスト自転車ですら車両価格は15万円くらいが相場ですから、自転車と考えるとやっぱり高いです。
当然のように、ママチャリほど台数が売れないe-bikeはさらに値段が高くなります。
スペック的な部分を通常のスポーツバイクと比較すると、コンポーネントのグレードが一つ下がるくらいの価格の差があります。
つまり、ロードバイクの場合だと、電動アシスト機能無しならULTEGRAが選択できたとしても、電動アシスト機能有りだと105になってしまうようなイメージです。
電動アシスト自転車のデザイン
電動スポーツ自転車はバッテリーがある関係で一般的なスポーツ自転車と比べるとデザインがイマイチなものが多いです。
バッテリーが思い切り見えているものや、ダウンチューブがやたらと太いなど、普通の自転車と比べると不格好なのは否めません。
しかしながら、海外メーカーから出されている最近の電動アシスト自転車は普通の自転車と区別がつかない見た目のデザインも増えてきている印象です。
国内メーカーはシティサイクル用の電動アシスト自転車のバッテリーをそのまま流用したいのか、外観から大きなバッテリーが見えたままのものが多く、デザイン的にはまだまだな感じなので頑張って欲しいんですけどね。。。
電動アシスト自転車に乗ってわかったe-bikeの良さ
e-bikeだって運動になる
「電動自転車は運動にならない」と思う人もいるかもしれませんが、実際は違います。
坂道ではそれなりに漕がなければ前に進んでくれませんし、アシストしてくれるのは時速24kmまでなので、それ以上のスピードで走ろうと思えば普通の自転車と同じように自力でペダルを踏まないと前に進みません。
当たり前ですが、オートバイなどとは違うので、ペダルを踏み続ければ息切れだってしますし、長距離を走れば汗だってかきます。
電動アシスト自転車は漕ぎ出しや坂道などの負荷が軽減されるだけですから、普通のスポーツバイクで平地を走る時くらいの運動量は得られるのです。
電動アシスト自転車が活きる場所
仲間と一緒にサイクリングに出かけたいと思っても、サイクリング仲間のほとんどがガチ勢だったりすると「付いて行ける自信がない」という人も多いと思います。
特に坂道の多い難易度の高いコースが選択された場合、体力のない人は足手まといにならないように参加を断念するなんてこともあるわけです。
そんな場合にこそ、e-bikeの出番です。
e-bikeなら体力差をカバーできて、体力や実力の違う自転車仲間と一緒にサイクリングを楽しむことだって出来るのです。
ゴルフでハンデがあるように、ギアの選択や電動アシスト機能で体力差を縮めるようなことができるのは自転車ならではの良さでしょう。
三台持ちの時代が来る?
僕は「スポーツバイクは用途に応じて使い分けて乗るのが良い」という考えです。
例えば、クロスバイクとロードバイクとでは全く性格が異なる自転車なので、どちらが良いとかではなく、用途に応じて乗り分けるべきだと思っています。
実際のところで、用途によって自転車を乗り分けるために、クロスバイクとロードバイク、あるいはマウンテンバイクの二台持ちをしている人も沢山います。
もっともっと用途にこだわれば、タイムトライアル用、ヒルクライム用、クロスカントリー用などと細分化して、それぞれの用途に特化した仕様の自転車に乗るということが理想にもなるわけです。
その中の一つにe-bikeも加わって、最終的には三台持ちになる時代もやってくるかもしれないなんて思います。
電動アシスト自転車のメリットは乗れば解る
僕自身もヤマハが電動スポーツ自転車を発表した当時は、多くのサイクリストと同じように否定的な意見でした。
ロードバイクに電動アシスト機能なんて絶対に必要ないし、乗りたいとも思っていませんでした。
しかし、子乗せ電動自転車を購入してから電動スポーツ自転車が世間に広く受け入れられている理由が理解できるようになり、電動アシスト自転車に対する考え方が大きく変わりました。
スポーツ自転車と言ってもその楽しみ方は人それぞれです。
ロードバイクに乗るサイクリストのように、ストイックに自転車に乗り、ヒルクライムやレースで自分をとことん追い込んだりするのも自転車乗楽しみ方の一つですが、それが全てではありません。
気軽に色々な場所に自転車に乗って出掛けるようなサイクリングを楽しみたい人もいるわけです。
自転車に乗る人ならすぐに理解できると思いますが、気ままにブラブラと自転車を走らせて、季節を感じたり、景色を見ながら行きたい場所に行くことだって楽しいのです。
そういう人にとっては、辛い坂道などは自転車を乗る気持ちを萎えさせる部分であったりもするので、なるべく無い方が良いわけですね。
しかし、多くの場合、素晴らしい景色や、サイクリングの醍醐味は激坂などと呼ばれる厳しい坂道を超えた向こう側にあることが多いと思います。
激坂を登る体力が無くても、風光明媚な峡谷へ自転車で行ってみたいと考える人だって居るはずですが、激坂を超えられないので諦めてしまうことになります。
そういう人たちでもe-bikeさえあれば、無理なく峡谷へサイクリングに出かけられるわけで、今まで体力的に諦めていた場所へも行けるようになり自転車に乗る楽しみを拡げることができるのです。
僕と同じように考える人はきっと世界中に沢山いるので、その結果として、多くのメーカーで電動アシスト自転車e-bikeが販売されるようになっているのだと思います。