今回起きた事故は、自転車マナーや整備云々の話ではなく、自転車に乗る人なら、誰でも加害者になってしまう可能性のあるケースだと思うので、その理由を自転車乗りの視点でまとめさせていただきました。
また、この手の事故は「危険運転だったかどうか」だけでは説明しきれず、道路構造・回避行動・速度・視線の分散が重なって起きる点も重要だと感じます。
千葉県船橋市自転車死亡事故詳細
高校生の自転車にはねられ女性死亡 船橋市
千葉県船橋市で、48歳の女性が高校生が乗る自転車にはねられ死亡した。
5日午後6時前、船橋市宮本の病院に勤める48歳の女性が、ゴミを出しに駐車場に出たところ、突っ込んで来た15歳の男子高校生が乗る自転車にはねられた。女性は頭を強く打ち、6日朝に病院で死亡した。
駐車場前の道路は、緩やかな下り坂だったが、男子高校生は警察に対し、「下り坂の車道を走っていたが、後ろから来た車をよけようとして前輪を縁石に乗り上げてしまい、バランスを崩して女性に突っ込んでしまった」と話しているという。警察が当時の状況を詳しく調べている。(11/06 14:22)
http://www.ytv.co.jp/press/society/TI20191289.html
「また自転車の無謀運転か・・・」と思いながら記事を読み進めると、縁石でバランスを崩したとあります。
ここで多くのサイクリストが引っかかるのが、「なぜそこで転ぶのか?」という点です。
一見すると単純な段差でも、実際の走行中は
後方から車が接近しているプレッシャー
進路変更の一瞬の判断
路面状況の把握不足
下り坂による速度上昇
といった要素が同時に重なっており、単純な操作ミスとして片付けにくい状況が生まれます。
Photo via:http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00307723.html
上記はニュース映像のキャプチャ画像ですが、この画像を見た瞬間「あぁ・・・」と思ったのは僕だけではないと思います。
日頃からクロスバイクやロードバイクに乗る方なら、何を言おうとしているのかはすぐに理解できると思います。
マウンテンバイクなどのタイヤが太い自転車であれば問題なく乗り越えられる縁石でも、ロードバイクやクロスバイクなどの細いタイヤの自転車では、段差を乗り越えられずにハンドルを取られてしまうことがあります。
例えば、上記の写真程度の段差であれば、マウンテンバイクなどは問題なく乗り越えられるでしょうが、シティサイクルでもタイヤが引っかかり、ハンドルを取られてしまうことがあると思います。
ここで少し補足すると、縁石や段差での転倒は「高さ」よりも、むしろ角度と接触の仕方で発生します。
特に危ないのは以下のようなケースです。
斜めに浅く進入する
ペダリング中で荷重が抜けている
視線が後方車両に向いている
ブレーキをかけながら進入する
この状態になると、タイヤが段差を“登る”のではなく、“横滑りする”形になり、フロントが一気に持っていかれます。
ロードバイクやクロスバイクに限らず、シティサイクルでも普通に起こる挙動です。
事故現場付近
現場の道路の様子です。
追い越し禁止の一車線。
緩やかな下り坂で、スピードが少し出ていたかもしれません。
実際、スピードが出ていなければ転倒しても大きな事故にならなかった可能性は高いと思われるので、スピードの出しすぎがこの事故の要因の一つだとも考えられます。
しかし、この細い道で車道を走れば、後ろから来る自動車を意識せざるを得ないでしょうから、なるべく自動車の進行の邪魔をしないように、否が応でもスピードを出してしまうような道だったのかもしれません。
ストリートビューを見る限りでも、細い道のわりに交通量が多いようですし、事故の起きた午後6時頃となると帰宅ラッシュの時間とも重なりますから、自動車の流れに合わせてスピードを出していた可能性もあります。
後ろから自動車が来たため、追い抜かせるために左に寄せたか、歩道に上がろうとした際に縁石の段差にタイヤが引っかかり、バランスを崩し、その先に不幸にも被害者の方がいた……といった状況も考えられます。
自転車では気をつけたい縁石の段差

日頃自転車に乗る身として、この事故は「他人事ではないな」と思わざるをえない事故だと思います。
というのも、縁石付近や荒れた道とアスファルトの境目などを走る際には、いつも緊張を強いられます。
東京で言えば青梅街道や甲州街道(環七から西)などがそれにあたりますが、怒涛の交通量の中、荒れた車道を走るのは命の危険を感じることも多いです。
今まで転倒したことは幸いにもありませんが、段差でハンドルを取られてバランスを崩しそうになったことは何度かあります。
実際問題として、僕が街乗りでビンディングシューズを着用しなくなったのも、そういった事情があり、安全面を優先してのことでした。
もしバランスを崩して車道側に倒れていれば、後続車に跳ねられてもおかしくありませんし、逆に歩道側に転倒した場合、今回の事故と同じように歩行者がいればぶつかって加害者になる可能性もあるわけで、決して他人事ではない事故だと思います。
段差には斜めに入るべからず
クロスバイクやロードバイクの細いタイヤに慣れていない頃にやってしまいがちなのが、段差に対して浅い角度で侵入してしまうというミスです。
浅く段差に侵入すると、空気圧が高めで固くなったタイヤや細いタイヤの場合、段差を乗り越えられずに段差に沿ってタイヤがスライドしてしまい、ハンドルを取られてしまうことがあります。
なので、クロスバイクやロードバイクなどの細いタイヤの場合、段差を乗り越えるには注意が必要で、ハンドルを取られないようにするためには下記の点に留意しておく必要があります。
● 段差には極力侵入しないこと
● 侵入する際には速度を落とすこと
● なるべく侵入角度が大きくなるように正面から侵入する
ほんの少し意識すれば、危険を避けられることでもあるので、今回の事故のような悲惨な結果を招いてしまわないように、縁石の段差などには注意するように心掛けましょう。
ヘルメットと“想定外の転倒”
補足として重要なのがヘルメットの役割です。
自転車事故の怖さは「転ぶこと」よりも、転び方を選べないことにあります。
前方・側方・後方、どこに倒れるかはコントロールできません。
だからこそ、スピードを抑える、進路変更を急がない、路面状況を早めに読むといった“余裕を残す走り方”が重要になります。
自転車事故は「車との接触」だけでなく、今回のように段差や縁石などの小さな障害物が原因で発生するケースも多く、特にロードバイクやクロスバイクでは注意が必要です。
また、下り坂や見通しの悪い道路では、スピードが想像以上に出ていることがあり、ブレーキ操作や回避動作が遅れると一気にリスクが高まります。
自転車で縁石・段差を通過する際の注意点
・直前で急な回避行動をしない
・下り坂ではスピードを抑える
・段差は可能な限り正面から進入する
・車の動きに気を取られすぎない(特に進路変更時)
今回のような事故は、特別な危険運転によって起きるものではなく、日常的な走行中の「回避行動」や「わずかな進路ミス」がきっかけになるケースも少なくありません。
特にロードバイクやクロスバイクはスピードが出やすく、またタイヤも細いため、縁石や段差に接触した際のバランスの崩れが大きくなりやすい特徴があります。
さらに、下り坂や交通量の多い道路では、後方車両への意識が強くなり、結果として進路変更や速度調整が不安定になることもあります。
そのため、自転車事故の中でも「段差・縁石・回避動作」が重なるケースは、本人の意図とは関係なく重大事故につながる可能性がある点に注意が必要です。
自転車は自由度が高い乗り物である一方で、状況次第では一気に不安定になる乗り物でもあります。
だからこそ、「いつでも安全に逃げられる余裕を残す」という意識が、最も重要なのかもしれません。






