クロスバイクのフォークを交換する手順4は、クラウンレース(下玉押し)の圧入です。
元のフォークコラムから取り外したクラウンレースを、新しいフォークに圧入します。
フォーク交換の改造カスタマイズの作業の中では、恐らく最も難易度が高いのが、このクラウンレースの圧入の工程になると思います。
以下、クラウンレースの圧入方法と、注意点などについてまとめています。
新しいフォークにクラウンレース(下玉押し)を圧入する
クラウンレースの圧入に必要な道具
● クラウンレース(下玉押し)
● クラウンレースインストーラー
クラウンレースの圧入は、元のフォークコラムから取り外したクラウンレースを、新しいフォークのコラムに、元と同じように、根本まで圧入する作業です。
クラウンレースを圧入するには、「クラウンレースインストーラー」と呼ばれる専用工具を使用することになります。
専用工具とDIY工具について
クラウンレースインストーラーと呼ばれる専用工具は、単純に言えば鉄パイプなので、サイズさえ合えば、他のモノでも代用できます。
そのため、塩ビパイプを代用して作業を行う人が多いようです。
そんなわけで、僕自身も、ホームセンターで50cmほどの長さにカットしてもらった塩ビパイプを購入して、作業に取り掛かりました。
GIANT社のクロスバイクのESCAPEシリーズで使用されているフォークのコラム径は、その他のクロスバイクなどと同じ、28.6mm(1-1/8インチ)です。
内径が約30mmの塩ビパイプを使用すると、クラウンレースの内径とほぼ同じになり、圧入工具の代用として使用できます。
PV-30と呼ばれるサイズが該当するサイズです。
しかしながら、確実に作業するには、塩ビパイプのようなDIY工具ではなく、やはり、専用工具を使用した方が良いと個人的には思います。
DIY工具
● 塩ビパイプ(PV-30)
● ハンマー
クラウンレースの圧入作業
クラウンレースを通したフォークコラムに、塩ビパイプを被せます。
クラウンレースには、予めグリスを塗っておきましょう。
クラウンレースと塩ビパイプのサイズが見事にピッタリです。
後は、パイプの上からハンマーで叩けば、クラウンレースが圧入されます。
無事圧入されれば、作業はそれで終了となりますが、当然ながら簡単に圧入できるようであれば誰も苦労しないわけです。
実際は、思っていた以上に難航するのが「圧入」作業です。
僕自身も、作業の途中で投げ出してしまいたくなるくらいの大きな難関となりました。
圧入方法
参考までに、どのように圧入をしようとしていたかを説明します。
フォークは手持ちの状態で、ゴムハンマーで叩いていました。
人によっては、フォークを逆さに持って、塩ビパプごと地面に叩き落として圧入したりするようです。
クラウンレースの圧入作業で問題となったこと
音の問題
クラウンレースの圧入作業で最初の問題になったのは、音です。
ハンマーでパイプを思い切り叩いて圧入するわけですから、それなりの音が出ます。
田舎の一軒家であれば、恐らく問題にならないと思いますが、僕のように集合住宅で作業をしようとした場合、たとえ日中であっても問題になりそうなくらい大きな音が出ます。
夜中に作業をした際に、数回叩いて「この音はマズイ」と判断して、大きな公園までフォークとハンマーを持って出かけて作業を行いました。
深夜の人気のない公園で、自転車のパーツを持って「カコーン!カコーン!カン!カン!カン!」と大きな音を響き渡らせる中年男性は、不審者以外の何者でもなかったと思いますが、とにもかくにも「そうするしか方法は無い」と思われたので、必死になって叩きました。
それでもなお、響き渡る音を気にしながらの作業となりました。
結局それでも圧入できなかったので、最終的には日中に自宅室内で圧入作業を行いました。
音に関してはかなり気を遣いながらの作業になりました。
幸い、近所で重機を使用した工事が行われていたので、その音で誤魔化すようにしてハンマーを打ち続けました。
圧入出来ない問題
最も大きな問題が、簡単には圧入出来ないということ。
いくら頑張って叩いても、クラウンレースが圧入できないので、作業を投げ出してしまおうかと思ったほどでした。
工夫に工夫を重ねて、なんとか最終的には圧入することが出来ましたが、かなり大変な思いをしました。
圧入できなかった原因としては、以下のようなことが考えられます。
道具選定間違いが原因
クラウンレースをなかなか圧入できなかった理由として、塩ビパイプとゴムハンマーという選択がそもそもの間違いだったと思われます。
というのも、ゴムハンマーでは衝撃がマイルドになってしまうので、圧入するには不向きだということです。
鋭い衝撃を与えられる「鉄ハンマー」を使用するべきだったと思います。
次に、衝撃を均等にクラウンレースに伝えられなかった点が挙げられます。
「なるべく均等に衝撃を伝えたい」と考えて、パイプ全体を叩けるように、ハンマーヘッドの大きいゴムハンマーを選択したのですが、やはり均等に衝撃を伝えるのは難しく、いくら上手に叩いても、クラウンレースが斜めになってしまうという問題がありました。
この点、専用工具であるクラウンレースインストーラーの打点は円錐状になっているので、打点が小さくなり均等に圧力がかけられるようになっています。
そして、肝心の塩ビパイプですが、叩いている最中に割れてしまいました。
上記のように圧力が均等にかけられないまま叩いたことが原因かと思いますが、割れてしまっては使い物にならないので、塩ビパイプで作業する場合にはテープなどでグルグルと巻いて、補強などをしてからの方が良さそうです。
そんなことからも、最初からクラウンレースインストーラーを使用しておけば、もっとすんなり作業できたのではないかと思います。
クラウンレースの圧入の難易度には差がある
参考として、クラウンレースの圧入の難易度はケースバイケースで、いろいろな人の作業例を調べてみても、かなり差があるようです。
僕のように苦労する人が多いのは確かですが、あっさりと圧入できる場合もあるようです。
簡単に圧入できるのが標準レベルだと考えれば、塩ビパイプとハンマーでも問題がないかもしれませんが、それでも数千円をケチって不必要な苦労をするくらいであれば、最初から専用工具を購入するのが良いと思います。
ネット上にある改造カスタマイズ情報は、僕も日頃から非常に参考にさせてもらって実作業でも助けられることは多いですが、DIY系の工具での作業については、「専用工具を使用した方が良かった」と思うことの方が圧倒的に多いですね。
クラウンレースが圧入出来ない場合の対処法
クラウンレースがなかなか圧入できない場合は、下記のような方法をとると、圧入しやすくなる場合があります。
熱膨張を利用する
物は熱くなると、「熱膨張」で大きくなる性質を利用して、圧入しやすくする方法です。
クラウンレースを熱湯にしばらく浸けて、アチアチの状態にしてから作業すると、熱膨張で輪が広がるため、圧入しやすくなるというわけです。
僕も試してみましたが、うまくできませんでした。
専用工具を使用する
クラウンレースインストーラーは、滅多に使用することのない道具なので、購入するのは勿体無いと考えて、ホームセンターで買い集めたDIY工具を使用する人が多いわけですが、作業の効率や正確さを考えれば、専用工具を買ってしまった方が絶対に良いと思います。
クラウンレースインストーラーは、一見ただの鉄パイプですが、ハンマーで叩く打面が円錐状になっていて、衝撃が均等にクラウンレースに伝わるようになっているので、斜めに圧入されてしまうなどの失敗を防ぐこともできます。
割入りクラウンレースを使用する
クラウンレースは、通常は継ぎ目のないリング状ですが、一部が切断されて「割り」が入ったクラウンレースもあります。
「割り」が入っているために、圧入作業が非常に簡単に行なえます。
あまり強い圧力をかけられないフルカーボンフォークなどで使用されることが多いものと思います。
もちろん、使用するヘッドパーツのクラウンレースと同じサイズでないと使用することができません。
GIANT社のクロスバイクのクラウンレースだと「1-1/8"サイズ」のものであれば使用できると思われますが、サイズ以外にも、角度の問題もあるので、サイズが同じだからと言って、全てに適合するわけではなさそうです。
「割り」のあるクラウンレースを使用するのが、一番手軽で簡単そうですが、あまり実践している人がいないというのは、きっと適合しないなどの問題があるからだと思われます。
お店に持ち込む
お店に持ち込むのが最も確実な方法になると思います。
プロショップによっては持ち込みを嫌がられることもあるかと思いますが、大手自転車店である「サイクルあさひ」などは、持ち込みやすいのではないかと思います。
実際に調べたところ、圧入作業だけをお願いしている人もチラホラ見かけました。
お店にお願いしても、工賃もそれほど高くはないようなので、どうしても駄目だという時には、お店にお任せするのが良いでしょう。
僕が成功したクラウンレース圧入方法
クラウンレースの圧入方法として、王道と思われる塩ビパイプとゴムハンマーで挑んだ結果、全く圧入できなかったので、他の方法を試みるしかありませんでした。
いろいろ検討した結果、使用していないステムを使って金槌で叩くという方法で圧入しました。
ステムはコラムのサイズにピッタリなので、パイプ代わりに使用できるというわけです。
実際にこの方法を実践している人もいたので、それを参考にダメ元でチャレンジしてみました。
乱暴な方法のように思えましたが、金属パーツと金槌を使用したおかげで、鋭い衝撃を与えることができ、一叩きごとにクラウンレースが少しずつ圧入されていくのが分かりました。
結果、数分でクラウンレースの圧入作業が完了させることができました。
無事に圧入作業は出来ましたが、誰かに推奨できるかと言われれば、あまり推奨できない方法だと思います。
ちなみに、フォークは地面に置いたりせず、片手にフォークを持って宙に浮かせた状態で叩き込みました。
そんなこともあって、やはり最初から専用工具で作業をしておけば、何のトラブルもなくすんなりと圧入できていたと思われ、素直に専用工具を購入しておけば良かったと改めて思うわけです。
クラウンレースの圧入作業についてのまとめ
フロントフォーク交換作業の中で、最難関と思われるクラウンレースの圧入でしたが、予想通りの大苦戦でした。
戦犯は、専用工具を使用しなかったことの一点に尽きると思います。
最悪の場合は「自転車屋さんに持ち込めば良い」という考えもあり、ダメ元で大胆な叩き込みが出来たわけですが、うまく行かずに半分諦めかけていたのも事実です。
自転車のパーツには、圧入が必要な作業がいくつかありますが、素人作業で充分な作業場所が確保できないような状況では、圧入作業はできるだけやりたくない作業ですね。
経験としては、非常に貴重で重要なものだとは思いますが、素直に自転車屋さんにお願いするのが良いなと改めて思いました。
ちなみに、作業途中でクラウンレースを曲げてしまった場合などは、新しいクラウンレースを入手する必要があります。
GIANT社のクロスバイクの場合、GIANTストアにお願いするとスモールパーツとして取り寄せができるようです。
何はともあれ、クラウンレースの圧入が終わったので、精神的にはかなり楽になりました。
これでフォーク交換作業の工程的には折り返し地点となりますが、気分的にはほぼ終わったような感じがします。
次は、フォークのコラムに、スターファングルナットを圧入する作業です。