クロスバイクをブルホーン化しようとした際に、最大の問題となるのがブレーキの問題です。
ブルホーン化で使用することが多いエアロブレーキなどは、ロードバイクで使用されているキャリパーブレーキやカンチブレーキ用というところで、Vブレーキには基本的に対応していないという問題がありました。
ハンドルの形だけ換えて、シフトレバーとブレーキレバーはそのまま流用する簡易なブルホーン化の場合は全く問題になりませんが、エアロブレーキやブラケット付きのブレーキを使用するとなると、使用するブレーキレバーがVブレーキに対応しているかどうかを考慮する必要があります。
多くのメーカーではキャリパーブレーキやカンチブレーキ用のブレーキレバーはVブレーキとのワイヤーの引き量が異なるため、互換性が無いとされていますが、一般的なVブレーキに比べてブレーキアームの短いミニVブレーキの場合は互換性がある場合もあります。
そこで更に踏み込んで調べてみた結果、ブルホーンバーに使用するエアロブレーキもミニVブレーキに対応しているということが分かりました。
クロスバイクをブルホーン化する際のブレーキの問題
エアブレーキなどはVブレーキに非対応で互換性無し
クロスバイクをブルホーン化した際に、Vブレーキを動作させるためには、フラットバーハンドルに元々装備されているブレーキレバーを使用できれば問題ありません。なのでブレーキレバーをそのまま流用するような簡易的なブルホーン化であれば、ブレーキの動作についての問題は回避できます。
しかし、使用するブルホーンバーが肩下がりのあるタイプの場合だと、ハンドルのにぎり径のサイズの違いにより、元々のブレーキレバーの取り付けが出来ないため、新しいブレーキレバーを使用しなくてはいけなくなります。
この点を詳しく解説してみると、一般的なフラットバーハンドルのにぎり径は22.3mmなどであるのに対して、ブルホーンバーのにぎり径は25.4mmなどが一般的で一回り大きなサイズが採用されています。このため、元のブレーキレバーは取り付けすることができません。
ブルホーンバーで使用できるブレーキと言えば、エアロタイプのブレーキなどがその代表的なブレーキになります。
ところが、エアロブレーキはロードバイクなどで一般的に使用されているキャリパーブレーキやカンチブレーキで使用することを前提として設計されたものなので、クロスバイクで一般的に使用されているVブレーキとの互換性は無いとされています。
これは、キャリパーブレーキとVブレーキのレバーの引き幅とブレーキの可動範囲に違いがあるからで、キャリパーブレーキの引き量に対してVブレーキの引き量は大きく、キャリパーブレーキ用ではVブレーキのワイヤーを引ききれないため、ブレーキアームが少ししか動かないので「ブレーキを掛けられない」という問題が発生するのです。
そんなわけで、クロスバイクをブルホーン化しようと思うと、Vブレーキに非対応なのを承知の上で、アジャスターを噛ますなどしてVブレーキを引けるようにする必要があるのです。
ミニVブレーキなら非対応でも動作する可能性アリ
ここで肝心なのは「Vブレーキとはなんぞや?」ということになるのですが、実はVブレーキには通常サイズのVブレーキと、ブレーキアームの短いミニVブレーキがあります。
実はこのミニVブレーキはキャリパーブレーキやカンチブレーキなどと比べてブレーキワイヤーの引き量には大差がないので「動作させられる」という考え方ができます。聞いた話によればミニVブレーキはキャリパーブレーキやカンチブレーキと互換性を持たせるために開発されたVブレーキのようです。
要するに、ここで「互換性が無い」とされているのは、マウンテンバイクで使用されていることが多い通常サイズのVブレーキだろうとな、と想像ができます。
ということであれば、クロスバイクのVブレーキをミニVブレーキに交換すれば、このブレーキの問題は回避できるということになりそうです。
GIANT社の定番クロスバイクであるESCAPEシリーズなどに使用されているVブレーキは、幸いにしてミニVブレーキのようで、マウンテンバイクなどに装備されている一般的なVブレーキよりもアームが短い90mm程度のミニVブレーキが採用されているので、エアブレーキでも動作させられる可能性があります。
しかしながらメーカー的にはそのあたりについてほとんど言及しておらず、単に「キャリパーブレーキ用のブレーキレバーはVブレーキとの互換性がない」としている場合が多いのです。
それでは流石に不安になってしまうので「本当にミニVブレーキはキャリパーブレーキ用のブレーキレバーと互換性があるのか?」について調べてみることにしました。
エアロブレーキレバーとミニVブレーキの互換性
Photo via:https://amzn.to/2oSvEFT
僕の個人的な考えとしては、ブルホーン化するには、シフトレバーにはコンパクトなサムシフターを使って、ブレーキレバーにはバーエンドにエアロブレーキレバーを装備できれば、見た目もシンプルでカッコ良くなると思っています。
問題はエアロブレーキがVブレーキに対応していない点ですが、ブレーキアームが短いミニVブレーキやコンパクトVブレーキの場合は、通常のVブレーキよりも引き量が少なく、対応できる場合があります。
GIANT社のクロスバイクのESCAPEなどで使用されているVブレーキは、このミニVブレーキなのでエアロブレーキなどでも対応できるという可能性が残されているわけです。
● 通常のVブレーキはブレーキアームの長さが100mm程度
● ミニVブレーキやコンパクトVブレーキは80mm程度
僕がクロスバイクのESCAPE Airをブルホーン化する際にも、先人達の情報を基に、ミニVブレーキであればキャリパー用のブレーキであってもなんとか引けると信じてプロファイルデザインのエアロブレーキを使用することにしました。
「ダメならダメでまた別の方法を考えよう」くらいに思いながらの作業でしたが、結果としてフラットバーハンドルの頃と比べればVブレーキの制動は悪くなったものの、無事に動作させることができました。
道路交通法に違反していては元も子もないので、念のため制動距離もテストしてみましたが、道路交通法で定められているブレーキの制動距離(時速10km/hでブレーキを掛けた場合に3m以内に停車)は余裕でクリアする程度には動作させることができます。
メーカー非推奨の組み合わせであっても制動距離に問題がなければ、それは法律違反ではないので全く問題無いわけですが、気分的にはなんだかスッキリしないのもまた事実であり、なんとなく後ろめたい気持ちで乗り続けていたのでした。
主なエアロブレーキが対応しているブレーキの種類
参考までに代表的なエアロブレーキから対応ブレーキに関しての記述を調べてみると下記のような感じでした。
キャリパーブレーキ用orカンチブレーキ用
●
キャリパーブレーキ用
対応、非対応の記載無し
上記のようにキャリパーブレーキ用orカンチブレーキ用などの記載はあるものの、Vブレーキに非対応といような記載はありませんでした。「あれ・・・非対応の記載が無いってことはもしかしたら・・・」と少しワクワクしてきます。
レビューでは「クロスバイクのブルホーン化で使用しています」などのコメントも見られ、実際にエアロブレーキとVブレーキの組み合わせで使用している人も居るようで使用出来るのは間違いありません、というか僕自身が既に使用して問題無く使用できています。
しかし、レビュー欄のコメントは、何処の誰が発言したものか判らない、いい加減な情報の可能性もあります。そんなわけで、やはり、メーカー公式の情報が無いことには僕のモヤモヤは解決されないのです。
メーカーに互換性について問い合わせてみた
プロファイルデザインからの回答
悩んでいても仕方が無いので僕が使用しているエアロブレーキのメーカーであるProfile Designへメールを送って質問してみることにしました。
プロファイルデザインはアメリカのメーカーなので、もちろん英語での問い合わせです。僕は英検五級の英語力がありますから問題ありません。
Hi,
Do the brakes work with V-brake (SHIMNO MINI V-VRAKE)?
https://amzn.to/2Vd50DB「このブレーキってシマノのミニVブレーキでも動作するの?」って感じです。
数日後に返ってきた返事か下記の通り。
メールを開く前はドキドキしました。
Good afternoon, thanks for the inquiry. The Profile Design TT brakes were design for standard road caliper brakes, the levers will still be compatible with the Mini V brakes but they will not have a solid pull in the lever/cable housing. Best thing you could try is run the lever with a liner brake housing. Let me know if you have any other questions. おいっす。質問サンキュ。プロファイルデザインのTTブレーキはキャリパーブレーキ用に設計されてるゼ。そしてミニVブレーキとも互換性が有るゼ。だけどアジャスターボルトが無いからケーブルアジャスターと一緒に使うのが良いと思うゼ。試してみな!
他にわかんねぇことあったら遠慮なく聞いてくれよな!
メーカーからの回答は互換性アリで、思わずガッツポーズが出てしまいました。
ただし、全く問題が無いというわけではありません。
ブレーキケーブルアジャスターは必要
エアブレーキとミニVブレーキとでは互換性がありますが、そのままブレーキを調整しようとしてもシビアな調整を強いられます。
理由は簡単で、キャリパーブレーキ用のブレーキレバーであるエアロブレーキレバーとミニVブレーキの組み合わせだとケーブルアジャスターがどこにも無いのです。
ケーブルアジャスターとはワイヤーケーブルの途中に装備して、ケーブルの張りを微調整できるようにするための小さなパーツですが、この問題はそれぞれのブレーキの構造の違いによって生じています。
Vブレーキの場合、ブレーキレバー側にケーブルアジャスターが備わっているのに対して、キャリパーブレーキはブレーキ本体側にケーブルアジャスターが備わっています。
つまり、エアブレーキとVブレーキの組み合わせの場合、ブレーキレバーとブレーキ本体のどちらにもケーブルアジャスターが存在しなくなってしまうのです。
この問題をクリアするためには、ブレーキケーブルアジャスターのSM-CB90などと一緒に使用する必要があります。
● Vブレーキ ブレーキレバーにアジャスターがある
● エアロブレーキレバー キャリパーブレーキ側にアジャスターがある
別売のケーブルアジャスターを使用して問題を解決する
ケーブルアジャスターが無い場合には、別途販売されているケーブルアジャスター単品を使用して微調整できるようにします。
ケーブルアジャスターはいろいろなメーカーから販売されていますが、個人的にはシマノのSMCB90が特にオススメです。
SMCB90は他のケーブルアジャスターと比べると高価ですが、アジャスターとしての機能だけではなく、クイックリリース機能が付いているので、ワイヤーの微調整だけでなく、ワイヤーを一旦開放してワイヤーを大きく緩めることができるのです。
シマノ(SHIMANO) ケーブルアジャスター SM-CB90 クイックレリーズ機能付(1個入り) ブレーキ用 ISMCB90
ちなみにケーブルアジャスターはシビアな調整が必要な場所に使用すると微調整がしやすくなるので、ブレーキワイヤーの調整だけでなく、シフトワイヤーにもアジャスターを使用すると変速調整が楽になります。
ブレーキケーブルアジャスターが必要な理由などについては下記の記事で詳しく解説していますので興味のある方は参考にしてください。
結論:エアロブレーキでもミニVブレーキは動作する
クロスバイクをブルホーン化する際のブレーキの互換性の問題のキモは、Vブレーキが通常のVブレーキか、小さなミニVブレーキかというところになります。
通常のVブレーキが装備されている場合は、キャリパーブレーキ用のブレーキレバーの場合は、基本的に互換性が無いと思って間違いないと思われるので、Vブレーキに対応したブレーキレバーを選択しなければいけません。
ミニVブレーキが装備されている場合は、キャリパーブレーキ用のブレーキレバーでも動作させられると思われるので、後はケーブルアジャスターを忘れずに取り付けて、調整すれば良いということになります。
僕自身がエアロブレーキレバーを採用したブルホーン化をしているので、エアロブレーキレバーで解説してみましたが、エアロブレーキレバー以外のブレーキレバーでも同様に動作させられるものと思います。
以上、クロスバイクをブルホーン化する際に問題となるキャリパーブレーキ用のハンドルとミニVブレーキの組み合わせに関する互換性についてと、微調整できない問題の解決方法についてまとめてみました。参考になれば幸いです。
何はともあれ、メーカーからも互換性アリの回答が得られて、これで晴れてスッキリした気持ちでサイクリングを楽しむことができそうです。
よかった、よかった。