クロスバイクやロードバイクの駆動部分のパーツ(コンポーネント)に関する情報をまとめています。
自転車を構成するメイン部分のパーツの集まりで、自転車のスペックを決定する部分でもありますが、様々なバリエーションやグレードなどが存在するため、それらを理解するのが大変な部分でもあります。
フレームだけ買って、好きなパーツを買い揃えて組み上げる、いわゆるバラ完をしようとした際に、どのパーツを選択するのかは避けられない問題ですが、一体どのパーツを選択すれば良いのか躓いたりするポイントでもあります。
よく理解しないまま選択してしまうと「思ってたのとは違う」結果になってしまったり、取付けが出来ないなどの問題にも繋がります。
この記事ではコンポーネントの主要パーツである、クランク、スプロケット、ディレーラー周りについての基本的な情報をまとめています。
より詳しい情報は下記の関連記事一覧で詳しく解説していますので、参考にしてください。
コンポーネントに関する記事一覧
クランクセットについて
ノーマルクランクとコンパクトクランク
クランクセットにはノーマルクランクとコンパクトクランクがあります。
標準サイズのクランクがノーマルクランクで、ギア数が少なくなったクランクがコンパクトクランクと呼ばれます。
クランクのチェーンリングの標準的な歯数
● ノーマルクランク 52/39程度
● コンパクトクランク 50/34程度
ノーマルクランクに比べて、コンパクトクランクの方が直径が小さく、歯数も少なくなります。
自転車の場合、フロントのギア(チェーンリング)の歯数が少ないほど軽いギアになるので、同じスプロケットを使用していたとしても、コンパクトクランクの方が坂道などで楽に走れたり、平地で高速走行の際にはノーマルクランクの方が有利になったりします。
例えば、ロードバイクやクロスバイクを最初から組み立てるような、いわゆるバラ完をしようと考えた際には、ノーマルクランクかコンパクトかを選択する必要があり、悩みどころだったりします。
プロやガチなロードレーサーの場合は、ギア比を細かく計算して、コースによって使い分けるなども必要になると思いますが、趣味のサイクリストであれば、そこまでシビアに考えずに「坂道走行が多いのでコンパクトクランクにする」とか「脚力に自身があるのでとにかく重たいギアを踏みたいからノーマルクランク」というようなザックリとした決め方でも良いんじゃないかと個人的には思います。
逆に言えば、より個人個人の体力やコースに適した調整をするためにバリエーションがあるものなので、結論的には、個人個人が好きな組み合わせを選択すれば良いということになります。
スプロケットでも調整はできる
スプロケットにもいろいろな歯数の組み合わせがあり、最適なギアの選択はスプロケットで行うのがバリエーションも多いですし、手軽に交換できるメリットがあります。
極端な例を挙げれば、異なるスプロケットを装備したホイールをいくつも用意しておけば、後輪を換えるだけで、ギアを変更することができます。
しかし、クランクの交換は手軽にできるものではないので、一度決めれば、基本的にはそのクランクを使い続けることになります。
なので、一番最初の方向性をザックリと決めるためにノーマルクランクかコンパクトクランクを選択する感じになるかと思います。
クランクについてのより詳しい情報は下記の記事でまとめているので、参考にしてください。
シマノ(SHIMANO) FC-R7000 クランクセット IFCR7000CX04L ブラック 170mm 50x34T
ディレーラーについて
チェーンステーアングル
ジオメトリーと呼ばれるフレームの設計の違いによって、走行性能にいろいろと差が出るようになっています。
いくつかあるジオメトリーの特徴の中で、シートチューブとチェーンステーの間の角度(チェーンステーアングル)がフロントディレーラーの取り付けに影響を与えるので、フロントディレーラーを選択する際には、このチェーンステーアングルを事前に把握しておく必要があります。
一般的なチェーンステーアングル
●ロードバイク 61°〜66°
●クロスバイクとマウンテンバイク 63°~66°または66°~69°
一般的なチェーンステーアングルは、だいたい上記のような感じになっていて、フロントディレーラー選びの際には66°が一つのポイントになります。
チェーンステーアングルが66°以下であればロードバイク用のフロントディレーラーが使用できますが、67°以上の場合はロードバイク用のフロントディレーラーは使用できず、マウンテンバイク用のフロントディレーラーを使用する必要があります。
逆に言えば、ロードバイクのフレームのチェーンステーは66°以下が基本になっているので、ロードバイク用のフロントディレーラーを選択すれば何も問題が起きないようになっています。
しかし、クロスバイクの場合は、ロードバイク寄りのフレームと、マウンテンバイク寄りのフレームが混在しているので、自分の自転車のフレームがどちらのタイプなのかを知っておく必要があります。
ロードバイクや一部のクロスバイクのフレームにマウンテンバイクのフロントディレーラーは取付けられない
注意しなければいけないのは、ロードバイクのフレームや、GIANT社のESCAPEシリーズなどのロードバイク寄りなフレームを採用しているクロスバイクにはマウンテンバイク用のフロントディレーラーは取付けできません。
なので「ロードバイクにマウンテンバイクのコンポーネントを組み込んでみよう」などと検討する場合には、自身の自転車のチェーンステーアングルを調べて対応の可否を検討した方が良いでしょう。
チェーンステーアングルについては下記の記事で詳しく解説していますので参考にしてください。
チェーンステー(リアセンター)の長さ
パーツの選定には関係ありませんが、チェーンステー関係の情報として、チェーンステー(リアセンター)の長さは、自転車の性格に影響を及ぼす部分でもあります。
一般的にリアセンターの長さが短くなるとゴリゴリのロードレーサー的な性格になり、乗り心地や安定性よりも走行性能を優先させた自転車になります。
逆にリアセンターの長さが長くなると、安定性が増して長距離走行や街乗り向きに適した乗り心地の自転車になります。
例えば、GIANT社の定番クロスバイクであるESCAPE Rシリーズなどは、2022年モデルから乗り心地を優先させて、リアセンターを従来モデルから長くするような変更がされました。
リアディレーラーのサイズ
ショートゲージとミディアムゲージ
Photo via:https://bike.shimano.com/ja-JP/components/road/category/rear-derailleur.html
リアディレーラーにはショートゲージとミディアムゲージと呼ばれるものがあり、それぞれに対応するスプロケットの歯数が異なります。
例えばULTEGRAのショートゲージ(RD-R8000-SS)の対応スプロケット: 11-25T~11-30Tなのに対して、ミディアムゲージ(RD-R8000-GS)は対応スプロケット: 11-28T~11-34Tになっています。
● ショートゲージ: 11-25T~11-30T
● ミディアムゲージ: 11-28T~11-34T
スプロケットはギアの組み合わせによって、様々なバリエーションがあり、ライダー自身の体力や走行するコースなどに投じて適切なスプロケットを選択することになります。
最大ギアが30T以上のスプロケットを選択しようとする場合や、逆に28T以下のスプロケットを選択しようとする場合には、現在使用しているリアディレーラーがそれぞれのギアに対応しているかを確認する必要があります。
例えば、ショートゲージの場合、最大30Tまでしか対応しておらず、坂道などに強い大きな歯数のギアを使用できなくなります。逆にミディアムゲージの場合は34Tまでの大きな歯数のギアを使用できますが、最大ギアが28T未満のような平地走行を意識したような小さなギアは使用できません。
スプロケットについて
11速用ホイールと8速/9速/10速のスプロケット互換性
ロードバイクも多段化が進み2021年現在では11速が主流になっています。多段化に伴い、ロード用ホイールも11速対応モデルがほとんどになっています。
しかし、全ての自転車が11速化になっているわけではありません。クロスバイクなどは8速や9速が主流です。それでもホイールはスペックアップに必要不可欠なパーtなので、ロード用ホイールを取付けたいと考える人も多いはずです。
そこで問題となるのが「11速用のホイールを取付けても大丈夫なのか?」というところで、ホイールの購入を検討してみたものの、11速対応ホイールが8速や9速のスプロケットで使用できるかどうか分からずに悩んでしまうのです。
結論から言えば取付けは可能です。
ホイールとカセットスプロケットの対応表
各ホイールの対応ギア数と、スプロケットの組み合わせ対応は上記のようになっていて、スペーサーを使用することで8速や9速のスプロケットを使用することができます。(スペーサーは標準でホイールに同梱されていると思います。)
ホイールとスプロケットに関する詳しい解説は下記の記事で解説しています。
シマノの11速用ホイールに8速/9速/10速/12速のカセットスプロケットは取り付けられるのか?|クロスバイク・ロードバイク
シフトチェンジのタイミングについて
クロスバイクやロードバイクの楽しさは、その軽快な走りかと思います。そして軽快な走行をするためには適切なシフトチェンジが必須になります。
しかし、よくある問題として、シフトチェンジの際に「ガリガリ!ガッチャン!」とうような異音が出てスムーズなシフトチェンジが出来ないことがあります。
それは適切なタイミングでシフトチェンジを行えていないことが原因だったりするので、適切なタイミングでシフトチェンジをすることを意識すれば「スパッスパッ」とスムーズに動作するようになるはずです。
停車時にシフトチェンジを行わない
シフトチェンジは停車時にはシフトチェンジを行わないのが基本です。
停車している時にシフトをチェンジしてしまうと、走り出した際にチェーンとギアが上手く噛み合わない状態でスタートして嫌な異音を立てるようになります。
チェーンにも負荷が大きくなるので、停車時のシフトチェンジは避けましょう。
ペダルの負荷が小さくなるタイミングが理想
走行時にシフトチェンジを行う際にも適切なタイミングがあり、ペダルを強く踏み込めな位置でシフトチェンジを行うのが理想です。
ペダルを強く踏み込めない位置は、クランクの位置が11時と5時に来る位置で、このタイミングでシフトチェンジすると、チェーンへの負荷が少なく、スムーズにシフトチェンジが出来るようになります。
逆に負荷が大きいタイミングでシフトチェンジを行うと、走行中であっても「ガリガリ!カッチャン!」というような異音が出てしまいます。
シフトチェンジのタイミングについての解説は下記の記事を参考にしてください。
スプロケット交換で最適なギア構成を検討
ギアを構成するメインパーツであるスプロケットには様々なギアの組み合わせが存在します。
ギア構成によって走行した際の感じが全くかわるので、目的やコースなどによって最適なスプロケットを選択する必要があります。
クロスレシオ
ギア比についてはいろいろな考え方がありますが、基本としてはトップギアとローギアの歯数で、2つの歯数の数値の差が少ないほど細かく歯数が刻まれていてクロスレシオなどと呼ばれたりします。
例えば、シマノのCS-R9100の11-25Tと呼ばれるギア構成を確認すると
11-12-13-14-15-16-17*-19*-21*-23*-25*T
という感じで、数字が綺麗に並んでいるような構成になっています。
数字が綺麗に並ぶと、シフトチェンジを行った際に「ガッチャン」「ガッツン」というようなショックが少なくなり、シームレスでストレスの少ないシフトチェンジが行えるようになります。
反面、選択できるギアのバリエーションの幅が少なくなるので、坂道を犠牲にした平地走行専用にしたり、平地走行を犠牲にして山道専用にしたりなどの割り切りが必要になります。
SHIMANO(シマノ) DURA-ACE デュラエース R9100シリーズ カセットスプロケット CS-R9100 11S 11-25T 33557
ワイドレシオ
逆に2つの歯数の数値の差が大きいスプロケットはワイドレシオと呼ばれ、幅広いギアが使用できるのでオールラウンダー的なスプロケットになります。
例えばシマノのCS-R9100の11-30Tとと呼ばれるギア構成を確認すると
11-12-13-14-15-17-19*-21*-24*-27*-30*T
という感じになり11-25Tと比べると数字が飛んでいる並びになっています。
シームレスなシフトチェンジを犠牲にする代わりに、坂道で楽なギアが備わっていたりして、あらゆるコースに対応できるようなギア構成です。
SHIMANO(シマノ) DURA-ACE デュラエース R9100シリーズ カセットスプロケット CS-R9100 11S 11-30T 33559
多段化で問題は少なくなってきた
以前はロードバイク用のスプロケットでも8速や9速だったこともあり、クロスレシオとワイドレシオのスプロケットの違いはかなり極端でしたが、11速化など多段化することで、どちらのタイプのスプロケットでもそれほど大きな差ではなくなってきていますから、以前ほどはスプロケットの選択で失敗することはなくなりました。
多段化した現在では、平地用、坂道用などの方向性を絞り込む目的でスプロケットを選択するというよりは、より目的に即した理想的なギア比を求めるためのバリエーションになっているかと思います。
クロスバイクのスプロケット部分にある透明のプラスチック製円盤
クロスバイクの場合、スプロケットを見ると、透明や半透明のプラスチックでできた円盤が装備されていることがあります。
ロードバイクなどではほとんど見ることがないため、この円盤が何の役割をしているのか、そして必要なものなのかという疑問が湧いてきます。
このプラスチック製の円盤はスポークプロテクターと呼ばれるもので、シフトチェンジをした際にチェーンがホイール側に落ちないようにするためのものです。
走行中にホイール側にチェーンが落ちてしまうとスポークが折れたりすることから、その名前の通り、スポークを守るために装備されています。
ロードバイクは、元々ロードレーサーと呼ばれる自転車でレース用の自転車でもあることから、本当に必要な物以外は装備しないのが普通なので、スポークプロテクターも外されているというわけです。
誰でも安全に使えることを考えれば、ロードバイクでもスポークプロテクターが装備されていれば良いとは思いますが、特に無くても困るようなものでもなく装着しなくてはいけないものではないですし、クロスバイクであっても自己責任で取り外しても問題はないと思います。
スポークプロテクターについては下記の記事で解説しています。
シフトレバーについて
買ったばかりの自転車のシフトチェンジの調子が悪くなる原因
クロスバイクやロードバイクを購入して2週間〜1ヶ月くらい経つと、シフトチェンジした際に「カラカラ」と異音が出るようになったり、シフトチェンジしたタイミングでチェーンが外れてしまうなどの問題が出るようになります。
何も知らないと「買ったばかりの自転車なのに、もう不具合が出た!」となってしまいますが、普通の現象です。
ワイヤーの初期伸び
というのも、シフトレバーでディレーラーを操作するためにワイヤーを張っているのですが、使用しているうちにワイヤーが少しずつ伸びてくるのです。
ワイヤーの「初期伸び」と言われるような現象で、シフト操作の度にワイヤーが引っ張られ伸びることで、少しずつ調整がズレてしまってシフトチェンジに不具合が出るようになってしまいます。
丁寧なショップであれば、購入時に必ず教えてくれると思いますし「調子が悪くなったら持ち込んでくださいね」というところです。
シフトチェンジだけでなく、同じ様にワイヤーを貼って操作するブレーキについても、徐々にブレーキの制動が落ちてくるので、ブレーキレバーについても調整が必要になります。
この現象は、ワイヤーを張り替えた後には必ず起きる現象なので、シフトチェンジに不具合を感じるようになれば、調整するようにしましょう。
初期伸びについての情報は下記の記事で解説しているので参考にしてください。
フラットバー用のシフトレバー
クロスバイクにロードバイク用のコンポーネントを搭載しようとした場合に、悩んでしまうパーツがシフトレバーです。
ロードバイクなどでは、ブレーキレバーとシフトレバーが一緒になったブラケットタイプのレバーが使用されますが、フラットバーハンドルのクロスバイクにブラケットを取り付けるわけにはいかないので、フラットバー用のシフトレバーを使用することになります。
フラットバー用のシフトレバーは、以前はグレードも豊富でしたが、2021年6月現在ではかなりラインナップが整理されて、11速用、10速用などの本格ロード用コンポーネントで使用できるシフトレバーは、それぞれ1種類になっています。
● 11速用 SL-RS700
● 10速用 SL-4700
フラットバー用のシフトレバーについては下記の記事でまとめてあります。
チェーンについて
ミッシングリンク(クイックリンク)
チェーンの取り付け取り外しをしやすくするためのチェーン用のパーツとしてミッシングリンク(クイックリンク)と呼ばれるものがあります。
一長一短があるものであはりますし、必ず必要なアイテムではないので、無くても良いものではありますが、チェーンを簡単に着脱できるようになったり、チェーンの清掃の際のスタートの目印にできたりでメリットに感じる部分が多く、個人的にも使用しているパーツです。