ツールドフランス4度優勝したクリス・フルーム選手が、2017年にドーピング検査に引っかかったとことがありました。
白か黒かはハッキリしない状態ですが、クリス・フルーム選手が引っかかったとされる喘息薬の「サルブタモール」について気になったので調べてみることにしました。
サルブタモールとは
喘息の薬
喘息の発作を抑えるために服用する薬です。
気管支拡張剤としては世界で最も使用されているもので、気管支の筋肉を緩めて気道を開きやすくすることで、喘息の発作を抑えるのに効果があるとされています。
副作用
サルブタモールの副作用として、脂肪燃焼や骨格筋増強、交感神経興奮作用などの効果があり、ダイエット目的や、ボディビルディング目的で使用されることがあります。
骨格筋は骨格を動かすための筋肉で、身体を動かす上で非常に重要な筋肉のため、サルブタモールはドーピング目的で使用されることも多く、世界アンチ・ドーピング機関では、禁止薬物にも指定されています。
※申請をすれば、治療目的使用であれば吸入使用に限って認められます。
「知っておきたいアンチ・ドーピングの知識 2017 年版」でも、喘息の薬についての項で下記のように触れられています。
喘息の薬には禁止物質が多く、注意が必要です。使用するには TUE 申請(次項参照)が必要になる薬が多いので、喘息の方は必ずアンチ・ドーピングに関して詳しいスポーツドクターに早めに相談してください。喘息の吸入薬のうち、糖質コルチコイド(吸入ステロイドと言われるもの)と、ベータ2作用薬のうちサルブタモール、サルメテロール、ホルモテロールの吸入使用に関しては、2016 年までと同様、2017 年は TUE申請の必要なく使用可能であり、使用の申告も不要です。
TUE申請とは
TUE申請とは治療使用特例(Therapeutic Use Exemptions : TUE)の略。
ドーピング禁止物質・禁止方法を治療目的で競技者が使用したい場合に申請する手続きで、申請が認められれば、その禁止物質・禁止方法が使用できます。
喘息の薬とドーピング
喘息の薬のドーピングは自転車競技に多い
喘息の薬を使用したドーピングは自転車競技の選手に多いようです。
故意か、故意じゃないかはまた別の話として、喘息持ちの選手が喘息薬を摂取したことで、規定の量よりも多い禁止薬物が検出されて、出場停止などの処分を受けたりすることも珍しくはないようです。
うっかりドーピング
「うっかりドーピング」などという言葉もあるくらいで、体調がすぐれないという理由で風邪薬などを競技の前に飲むと、その風邪薬の中に禁止薬物が使用されていて、ドーピング検査に引っかかってしまうなんてこともよくあることのようです。
本人にドーピングの意図がなく、成分を確認せずに「うっかり薬を飲んでしまい」ドーピング検査に引っ掛かってしまうことから、うっかりドーピングと呼ばれます。
うっかりドーピングに関する本まであるくらいですから、アスリートの中ではよく知られていることなのかもしれません。
しかし、それにも関わらず、うっかりドーピングをしてしまう人が多いので「本当にうっかりなの?」と勘ぐってしまいたくもなりますよね。
アマチュアならいざ知らずですが、プロのアスリートだとドーピングのスキャンダルは選手生命をも左右してしまうことになりかねませんから、普通に考えれば、薬を服用する際には人一倍注意するはずですよね。
サルブタモール以外の喘息薬
いわゆる「β刺激薬」と呼ばれる種類の気管支拡張剤で、吸入使用が認められているサルブタモールやサルメテロールとホルモテロールの他に、制約がかけられているツロブテロール、フェノテロール、プロカテロール、ヒゲナミン、テルブタリン等があるようです。
TUE申請なしで使用できる喘息用吸入薬
喘息薬は普通の薬局でも入手できるものも多数あります。
フルタイド
パルミコート
オルベスコ
キュバール
アズマネックス(以上吸入糖質コルチコイド薬)
セレベント
サルタノール・インヘラー
アイロミール
*ベネトリン(以上吸入ベータ2作用薬)
アドエア(フルタイドとセレベントの合剤)
シムビコート(パルミコートの成分とホルモテロールの合剤)
フルティフォーム(フルタイドの成分とホルモテロールの合剤)
スピリーバ(吸入抗コリン薬)
ドーピングと治療の線引き
喘息持ちの選手が喘息の薬を使うというのは、別に悪いことではありません。
実際に、治療目的のための吸引であれば使用が認められています。
しかし過剰に摂取してしまうと副作用も大きくなるため、一定量以上の成分が検出された場合は「ドーピングの疑いがあるとみなしますよ」というような線引きがされています。
どの程度摂取すれば規定の値を超えるかは、体調や個人差もあるかと思いますが、この辺りは担当の医師と相談して決めるでしょうから、普通は数値を超えるなんてことは無いのでしょう。
尿中のサルブタモールが 1000ng/mL、あるいは尿中ホルモテロールが 40ng/mL を越える場合は、治療を意図した使用とはみなされず、管理された薬物動態研究を通してその異常値が上記の最大治療量以下の吸入使用の結果であることを競技者が立証しないかぎり、違反が疑われる分析報告(AAF)として扱われることになる。
喘息の薬とドーピングについて調べてわかったこと
今回、クリス・フルーム選手が喘息の薬のサルブタモールで陽性反応が出たというニュースを切っ掛けに、喘息の薬とドーピングについて調べてみたのですが、掲示板その他自転車好きな方々のブログなどでは、喘息薬の使用につい言及しているものが多く、「自転車選手には喘息が多すぎ」などの意見が散見され、以前から疑問視されている話題でもあるようです。
ドーピングの問題は、スポーツ全般に関わることではあるのですが、自転車競技はその中でもドーピングの問題は多い競技と言われているようです。
まとめサイトなどでも、頻繁にネタにされていて、ツール・ド・フランスの歴代チャンピオンのほとんどがドーピングに絡んでいるというような話もあり、本当のところはどうなのか気になります。
病気自体は仕方がないですし、むしろ病気を持ちながらも頑張る選手には、同じ病気で苦しむ人にとっても励みになるものだと思いますが、喘息薬がドーピングの言い訳に使われている可能性もあるなんて知ると、なんだか複雑な気持ちにもなってしまいますね。
今回調べてみた中で非常に興味深かった記事として、NHKのクローズアップ現代で特集された「“見えない”ドーピング 攻防の最前線」でした。
番組内で、元自転車選手のタイラー・ハミルトンへのインタビューが主な内容になっていて、なかなか興味深い内容でした。
スポーツと遺伝子ドーピングを問う:技術の現在から倫理的問題まで