ロードバイクもクロスバイクも2010年くらいまではアルミやクロモリフレームが主流で、カーボンフレームやカーボンホイールなどは高級品で、ハイエンドモデルくらいしか選択肢がありませんでした。
しかし、2021年現在ではカーボンフレームやカーボンホイールも値段がどんどん手頃になり、廉価モデルでもない限りは、カーボンフレームもカーボンホイールも手が出しやすい価格になってきたと思います。
その背景には「中華カーボン」などと呼ばれる、中国メーカーの手掛けるカーボン製品が多く登場し、カーボンフレームやカーボンホイールの普及に大きく貢献したことが大きいのではと思います。
そんな中華カーボン自転車製品の先駆け的な存在であるICAN(アイカン)について、個人的にも興味があったので調べてみました。
中華カーボンメーカーICAN(アイカン)
深センの自転車製品メーカー
中国発の格安自転車パーツと聞くと「台湾メーカー」をイメージする人も多いかと思います。GIANTやMERIDAなどの大手自転車会社が台湾企業であることや、その周辺にも自転車パーツなどのOEM会社が多いことから「アジアの自転車工場=台湾」というイメージがあるからです。
なので僕自身も、Amazonで格安なカーボン製品が出品されるようになった時も「台湾のどこかの会社が自社ブランドを展開させるようになったのかな」などと思っていました。
その格安カーボン製品のメーカーとして代表的なのがICAN(アイカン)なのですが、調べてみると台湾ではなく、香港の隣にある工業都市の深センに拠点を置く自転車メーカーです。
読み方は「アイキャン」と読みたくなりますが、公式サイトを参照すると「アイカン」が正解です。
中華カーボンのメッカは深セン
「カーボン製の自転車製品が台湾ではなくて深セン?」と疑問に思う人も多いと思いますが、実は深センはカーボン製自転車製品においてはメッカ的な場所でもあります。
というのも中国を代表するカーボン製自転車製品を製造するDegfu、Hongfu、BXT、Miracle Bike、Seraph(Tantan)などの知る人ぞ知るメーカーは全て深センに拠点があります。
Degfu
深圳市登富体育用品有限公司
Dengfu Sports Equipments Co., Ltd.
設立 2009年(2007年)複数情報あり
深圳市龙岗区坪地街道年丰社区新丰路4号6栋602
https://dengfu.en.alibaba.com/zh_CN/?spm=a2700.shop_cp.88.16
Hongfu
HongFu Sports Equipment CO.,LTD
設立 2006年
http://www.hongfu-bikes.com/
BXT
Shenzhen BXT Technology Co., Ltd.
設立 2008年
14 Feidong East Rd., Liuhe Community, Pingshan Office, Pingshan New Area, Shenzhen, Guangdong, China
https://bxtsports.en.alibaba.com/?spm=a2700.shop_cp.88.16
Miracle Bike
Shenzhen Miracle Bike Sports Equipment Co.LTD
9F No.49-D building ziHeng West Road; Kengzi agency, Pingshan new District; Shenzhen City, Guangdong province, China
http://www.miraclebikes.com/
Seraph(Tantan)
深圳市碳碳运动器材有限公司
Tantan Sports Equipment Co., LTD.
設立 2003年(2008年)(2014年) 複数情報あり
深圳市坪山新区坑梓街道梓明路4号
http://www.tantancycling.com/
ICAN
Shenzhen ICAN Sport Co.,Ltd,
設立 2009年
B6 building,Yinlong Industrial zone,Longdong Community LongGang District, Shenzhen Guangdong,China
https://icanjp.com/
OEMメーカーから自社ブランド展開
深センは2010年前後から始まった中国の発展とともに急成長してきた工業都市で、元々小さな農村だった町が、香港の隣という貿易的にも有利な立地だったことから、一気に発展した中国有数の大都市でもあります。
上記のカーボン自転車メーカーの多くも発展が始まった2010年前後に設立されていることが判ります。ICANもまた同じ時期に設立されたメーカーです。
自転車関係だけでなく、例えばカメラ機材の三脚なども深センやその隣の中山市などに集中して存在するのですが、やはりいずれも2010年前後に設立された会社が多いです。
また、関連会社なのか、下請けなのかはよく判りませんが、いずれも近い場所に会社があります。この現象は日本でもよく見られて、同じ業種が同じような場所にまとまって存在するのは珍しいことではありません。
例えばカメラのレンズであれば長野県あたりに工場が集中していますし、カメラメーカーの多くは厚木に工場があったりします。恐らく近くに同業他社があったほうが、いろいろいろと便利なのだろうと思われます。
2015年あたりから自社ブランドの海外展開で日本でも知られる
おそらくいずれの会社も元々は大手メーカーなどの製品のOEMを手掛ける工場的なポジションからスタートしていると思いますが、多くのジャンルで中国メーカーや企業がそうしたように、これらのカーボン自転車メーカーも2015年あたりから自社のオリジナルブランドを立ち上げて海外進出をするようになっています。
このあたりの事情や動向は、日本のAmazonでもマーケットプレイスに中華系企業が溢れ始めた時期なので「あー、なるほどね」と感じる方も多いと思います。
実際問題でICANの製品が日本で見られるようになったのも2015年から2016年あたりでAmazonで出品されるようになってからだと記憶しています。
ロードバイク用ホイールの情勢を変えたICANのカーボンホイール
圧倒的な格安価格のロードバイク用カーボンホイール
安かろう悪かろうのイメージを覆すカーボンホイール
中華カーボンが見られるようになった当初は「めちゃくちゃ安いカーボンホイールが中国の謎メーカーから出てるぞ」的な感じで注目されてはいたものの「安かろう悪かろうでしょ」「怖くて使えない」というような評価で、一部の物好きやチャレンジ精神が溢れる人が人柱になるのを覚悟して購入するようなものでした。
実際問題で、それ以前の激安中華メーカーの製品は粗悪品が多くて「安物買いの銭失い」がそのまま当てはまる製品が多かったのです。
ところが、実際に中華カーボンを使用するようになった人たちからの評価は、従来までの安かろう悪かろうの粗悪な中華製品のイメージとは違うものでした。
「コスパ最高」「価格を考えると驚くスペック」などのように、意外にも高評価だったりしたことから、口コミで広がり、一気に市民権を得るようになります。
このあたりは中国のものづくりの精神が向上したというよりは、製造機械の性能が向上したことが大きいと僕は思っていて、自転車製品に限らずでいろいろな中国製品の品質が向上した時期でもあります。
中にはDJIやxiaomi、Ankerなどのように世界的なメーカーに成長するような企業も出てくるようになりました。
一流メーカーに比べれば劣るけど必要十分な品質とスペック
もちろん、一流メーカーの高級な製品と比べると、製品のアフターサービスであったり、購入した際に不良品に当たる確率、細部までしっかりとした品質などの点では値段相応な部分も見られたりはします。
しかし「そこまで必要?」「この値段でそれを求めちゃいけない」レベルのもので、普通に使用するには全く問題のないくらいの品質の製品が当たり前になってきました。
ICANのカーボンホイールも同様で、必要十分なスペックと品質で従来までの中華製品のイメージを覆し、ブランドも徐々に有名になっていくようになります。
2021年現在ではICANのホイールも一定の評価を得た状態になり、定番カーボンホイールメーカーとして確固たる地位を築いているような状態です。
ICANのホイールはUCI(国際自転車競技連合)の承認を取れていたりするので、品質的にも保証されているのが実際のところです。
ICANの中華カーボンホイールでロードバイク用ホイール情勢が大きく変化
中華カーボンの登場までは、カーボンホイールと言えば20万円を超えるのが当たり前の超高級ホイールがほとんどでした。
しかし10万円を切るような価格の中華カーボンが登場するようになってから一気にカーボンホイールだけでなくアルミホイールまでを含めたロードバイク用のホイールの情勢が変わり始めました。
モデルによっては5万円程度のカーボンホイールも登場する中で、10万円以下のアルミホイールを日常用で使用してたユーザーの多くが中華カーボンホイールへと流れていくようになり、ホイールメーカー的にも最もスイートだったと思われる7〜10万円クラスのアルミホイールの購入層を根こそぎ中華カーボンに持っていかれたような状況になっているかと思います。
クロスバイクのユーザーやロードバイク初心者が手を出しやすい5万円程度のアルミホイールでさえ、検討候補にカーボンホイールが入ってくるようになっているので「どうせなら」とカーボンホイールを選択する人も多いでしょう。
メーカーやブランドにこだわる人にとっては中華メーカーのデカールが入ったホイールや無地カーボンなどは論外と考える人も少なからずいるようですが、自転車の多様化が進む昨今の時代において、そういうことにこだわる考え方自体が時代遅れになっている感もあり、今後もその傾向は強くなるものと思われます。
2021年現在でICAN以外にも格安カーボンホイールを販売しているブランドやメーカーがいくつもあるような状況なので、既存の有名メーカーなどはENVEのように高級路線と圧倒的なブランド力で勝負するくらいしかないのかなと思います。
中華カーボンホイールメーカー
● ICAN
● Superteam(スーパーチーム)
● Hulk-sports(ハルクスポーツ)
● IMUST(アイマシト)
SUPERTEAMカーボンホイールクリンチャー700cバイクホイール38/40/45/50/55/60/88 (60mm)
Hulk-sports(ハルク スポーツ)38mm 深 23mm 幅 カーボンホイール Novatec 271/372 ハブ カーボン クリンチ...
ICANの製品
ICANは格安カーボンホイールメーカーとしてまずその認知度を高めた感じがありますが、ロードバイクやマウンテンバイクなどのカーボンフレーム、ハンドルやステムなどの周辺パーツなどまで。自転車製品全般を手掛けるメーカーでもあります。
ロードバイク用ホイール
ロード用カーボンホイールを中心に、小径車用やファットバイク用など、様々な種類のカーボンホイールをラインナップしています。
前後セットで5万円を切るような手頃な価格の廉価モデルから、ハイエンドもでるでも10万円を切るような他社メーカーを圧倒するような価格が最大の特徴かと思います。ちなみにICANの全てのホイールは手組みのようです。
AEROシリーズ
2019年からシリーズ化された軽量化をコンセプトにしたホイールでFLシリーズの後継&上位互換モデル。
豊富なバリエーションのリムハイトやDT Swissハブモデルなど本格仕様になったフラッグシップのカーボンホイールです。
FLシリーズ
速くて軽量(Fast & Light)がコンセプトになったスタンダードなホイール。
Alphaシリーズ
2021年からシリーズ化されたホイールで手頃な価格が魅力の入門用ホイール。
NOVAシリーズ
軽量さと剛性を追求したアドバンスモデルで、1,400g台の軽量さと、東レT800を使用するなど高い剛性を意識して設計されたレース仕様の本格ホイールです。
DTシリーズ
上記のシリーズのホイールにDT SWISS社のハブを採用したハイエンドモデルのシリーズです。
フレーム
フレームはTRIAEROブランドとICANブランドで展開されています。
ロードバイク、マウンテンバイク、グラベル、クロスバイク、折り畳み自転車、タイムトライアルバイク、ファットバイク、ピストバイクなど、ほぼ全てのジャンルのフレームがラインナップされています。
フレームの価格も10万円を切るものがほとんどで、やはり驚異的な価格ですね。
ICAN製品の日本での購入
Amazonか直販サイトのみで購入可能
ICANの製品は基本的に一般的なショップでの取り扱いがないので直販から購入することになります。
以前はAliexpressあたりで購入するのが普通だったと思いますが、2021年現在では、ICAN自体がAmazonにも出品しているので、関税や送料などを考えるとAmazonで購入するのが良いと思います。
また以前はICANから直販する場合は海外のICANサイトから購入する必要があり、発送も海外からでしたが、現在は日本サイトも用意されて日本国内の倉庫から発送されるように変わりました。
金額は基本的にAmazonと揃えられていますが、直販サイトの方がクーポンを利用できるなどで、国内発送商品ならAmazonよりも直販サイトの方が安く購入できます。
ICAN ホイール・フレーム クーポン
直販サイトならロゴなしも選択できる
中華カーボンは魅力的だけど「中華メーカーのロゴ入りはちょっと。。。」と考える人の気持を理解しているのか、ICANのホイールやフレームはロゴ無しも選択できます。
個人的にもデカデカとメーカーロゴが入っているのは、中華メーカーに限らずであまり好きではありません。(広告みたいで嫌なのです(笑))なので出来るなら無地を選びたかったりするので、ロゴの有り無しを選べるサービスは非常に有り難いですね。
ICAN(アイカン)まとめ
ICANのホームページでは完成車も販売されていますが、中華カーボンのフレームとホイールの醍醐味はやっぱりパーツをバラで購入して組み上げる「バラ完」かと思うので、出来るだけ安くカーボン仕様のロードバイクに乗りたい人などにとっては最高の選択肢になると思います。
またホイールだけでも交換すれば、自転車のスペックは一気にアップするので、クロスバイクなどのスペックアップを狙ってカーボンホイールを導入してみるのも良いだろうと思います。
ただしVブレーキの場合はカーボンホイール対応のブレーキシューの選択肢が少ないので注意が必要です。