クロスバイクやロードバイクなどの自転車をメンテナンスする際の基本中の基本は注油(グリスアップ)ですが、注油と言っても適当にボルトや可動部に注油すれば良いわけではなく、グリスとオイルの使い分けをする必要があります。
そもそもグリスとオイルの違いって何?というところや、それぞれの特徴や役割、またグリースやオイルを注して良い場所と悪い場所について、自身のおさらいも含めてまとめてみました。
グリスもオイルの一種ですが、ここでは便宜的に液体状の潤滑油のみをオイルとして指しています。
クロスバイクやロードバイクのメンテナンスに必須のグリスとオイルってそもそも何?
グリスとは?
Grease(グリス)。
潤滑油の一種で、半固形状であること、粘度が高いことが特徴。
ベアリングなどで使用される他、密閉性が高いため埃や水分などが侵入しないようにするための処理としても使用される。
クロスバイクやロードバイクの用途で代表的なグリスと言えば、デュラグリス(シマノ プレミアムグリス)かと思います。
オイルとは?
潤滑を良くする為に使用される潤滑油で、一般的には液体状。
Rube(ルブ)などとも呼ばれます。
粘度によって性質が変わり、用途によって使い分けるのが一般的。
自転車の場合は、チェーンに使用するチェーンオイルなどがあります。
代表的なオイルメーカーとしては、ワコーズ、AZ(エーゼット)、フィニッシュラインなど。
クロスバイクやロードバイクの注油(グリスアップ)の意味と効果
メカ部などへの水分や埃の侵入防止
クロスバイクやロードバイクを注油(グリスアップ)する目的として、雨などで自転車が濡れてしまった際に車体内部やメカ内部へ水が浸入してしまうのを防いだり、通常走行時でも土埃りなどの細かいゴミが侵入してしまうのを防ぐシーリングの役割があります。
グリスが切れたまま放置すると、フレーム内に水や埃が入り込み、見えない部分の錆や腐食の原因となったり、スムーズな回転を妨げるトラブルの原因になったりします。
潤滑を良くする
注油(グリスアップ)することで、摩擦が減り、チェーンやベアリングなどの回転部が滑らかに動作するようになります。
例えばチェーンなどの注油(グリスアップ)を怠ると、赤錆びてしまったりして、キュラキュラと異音を立てるようになります。当然、きちんとメンテナンスされた綺麗なチェーンと比べると摩擦は大きく、それだけロスが大きくなるということになりますし、パーツの寿命も短くなってしまいます。
きちんと注油(グリスアップ)することで、摩擦の少ない快適なサイクリングができるようになります。
かじりを防止する
かじりとは、ネジが摩擦などにより焼き付いたりして動かなくなってしまう現象を言います。ネジ部にグリスアップすることで摩擦を少なくすれば熱の発生が抑えられるため、かじりを防ぐことができます。
クロスバイクやロードバイクの整備程度でネジが焼き付くことはそうそうないとは思いますが、ネジ部へのグリスを塗布することで、ネジの固着を防ぐなどの役割があります。
防錆効果
露出したワイヤー部分にグリスを塗布することで、ワイヤーの錆を防ぐなどの効果も期待できます。
クロスバイクやロードバイクのグリスを注す場所とオイルを注す場所
クロスバイクやロードバイクのグリスを注すべき場所
● ヘッドパーツ・キャップ
● シートポスト
● シートクランプ
● ブレーキタイコ部分
● 各ボルトネジ部
● クイックリリースシャフトとナット部分
● ヘッドチューブベアリング部
● ホイールフリー部
● BB部
● クランクの軸
● ペダルネジ部(軸部)
グリスアップする必要がある場所のポイントとして、流動しない(流れ落ちない)で油が残留し続ける必要がある部分や、水や埃が侵入してはいけない部分がグリースを塗布したり詰めたりする部分になります。
これらの部分には、液体状のオイルを差してはいけないとされています。液体状のオイルを差すとグリスが溶けてしまって流れてしまい逆効果になってしまうのがその理由です。
クロスバイクやロードバイクのオイルを注すべき場所
● ワイヤー類(アウターワイヤー内部)
● ブレーキ可動部(ブレーキシューは厳禁)
● ブレーキレバーの可動部
● クイックリリースの可動部
● アウターワイヤーの中
● チェーン
● クイックリリース
※プーリーについては基本的にオイルで良いと思われますが、グレードによってベアリングを内臓しているものもあるので、グリスを使用するか何も注さない場合もあるようです。一つのヒントとしては高価なプーリーの場合ベアリングが内臓されていることが多いとようです。
グリス使用部分へオイルを使用してはいけない理由
ロードバイクやクロスバイクのグリスを使用している部分へオイルを使用するとグリスが溶けて流れ出してしまうのことになるので、グリスを使用している場所にはオイルを使用してはいけません。
グリスを使用した代表的な部分と言えばベアリングを使用している部分となります。ベアリング内部にはグリスが詰められていてこの部分にオイルを吹き付けてしまうと、グリスがドロドロと溶け出してしまうのです。
同じような理由でグリスを使用している部分へのディグリーザーの使用も厳禁となります。ディグリーザーはその名前からも想像できると思いますが、油を分解して落とすための洗剤のようなものなので、グリスを使用している場所に使用してはいけません。
グリスを注す場所とオイルを注す場所を判断するポイント
回転する場所はグリス
グルグルと回転する部分は基本的にベアリングが使用されているのでグリスが使用されています。
例えば、ペダル部分、BB部分、それからホイールのハブ部分やハンドルを切った時に回転するコラム部分などにはベアリングが入っているのでグリスアップをする必要があります。
ネジやボルト部分はグリス
ネジやボルト部分なども基本的にすべてグリスを使用します。カジリ防止や固着防止となります。
フレームとパーツの接合部はグリス
シートポストやコラムの部分、BBなど、フレームとパーツを接合している部分にはグリースを使用します。固着防止のほかホコリや水などの浸入を防ぐ役割があります。
チェーン部分はオイル
チェーン部分には液体状のオイルを使用します。グリスの使用は固着や汚れの付着の原因となりチェーンには適していません。
チェーンオイルにはウェットタイプとドライタイプがあります。街乗り用途でチェーンをなるべく汚したくない人はドライタイプのサラサラしたチェーンオイルがおすすめです。
チェーを汚さないドライタイプのチェーンオイルについては下記の記事でまとめていますので参考にしてください。
パーツの関節部や可動部はオイル
ブレーキレバーやシフトレバー、ブレーキパーツなどの関節部や可動部にはオイルを使用します。オイルで滑りを良くすることができます。
自転車整備でグリスとオイルを注して良い場所と悪い場所まとめ
クロスバイクやロードバイクをメンテナンスする上では、必要不可欠な注油作業ですが、グリスとオイルを使用する場所を間違えると、結果として自転車にとって良くないコンディションを招いてしまうことにもなるので、しっかりとその違いを把握して使い分けてたいところです。
僕自身クロスバイクやロードバイクに乗り初めの頃は、グリスと潤滑油の役割の違いもよくわからないまま、何も考えずにメンテナンスブックに従っていました。もちろんメンテナンスブックではグリスとオイルを使い分けて解説されているのでそれでも問題なかったのですが、改めてグリスとオイルの特徴の違いや用途を調べてみてなるほど納得と言った感じです。ものにはそれぞれ用途や目的があるわけです。
ちなみにメンテナンスブックによって、同じ場所でも「グリスを使う」と書かれていたり「オイルを使う」と書かれていたりする部分もあったりするので戸惑うこともありますが、そういう部分は「どっちでも良いんだろうな」と、勝手に解釈していたりします。
いずれにしてもしっかりと注油してあげると、異音が出たりすることもないですし、明らかにクロスバイクやロードバイクが潤った感じで調子が良くなるので、マメ注油してあげるようにすると良いでしょう。