Photo via:https://www.sensahsmart.com/
ロードバイクやマウンテンバイクのコンポーネンツメーカーと言えば、SHIMANO、Campagnolo、SRAMの3大メーカーで、この3社で多くのシェアを占めているため新規参入が難しい分野でもあります。
しかし、SENSAH(センサー)と呼ばれる中華メーカーが新しく参入し、日本でも代理店経由での販売が開始され話題になりました。
中国メーカーと言えば、ホイールやフレームなどはカーボンメーカーが多く参入していたりはしますが、自転車のパーツとなるととても珍しいので、SENSAHが一体どんなメーカーなのかを調べてまとめてみました。
SENSAH(センサー/顺泰)
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SENSAHの基本情報
SENSAHは、スポーツサイクルの分野で20年以上関わってきた人たちが集まり、2014年2月に設立された新興バイシクルコンポーネンツメーカーです。
中国の広東佛山市に拠点があります。
公式ページやマニュアルなどを確認すると、2015年あたりからコンポーネンツを投入していたようですが、本格的に表に出始めたのはもう少し後です。
2019年あたりから、台湾の新興自転車メーカーであるMEMILの自転車チームが使用するロードバイクのコンポーネンツにはSENSAHが使用されるなど、本格的にパーツ供給がスタートしたのではと思われます。
情報は定かではありませんが、SRAMのシフトレバーの特徴であるダブルタップを採用したシフトレバーなどを開発しているところからも、SENSAHの設立に関わった人物は、元々SRAMに関わっていた技術者だろうという情報もあります。
参考 Memil BIKE (Asia) CO., LTD.
中国名:广东顺德顺泰智能运动器材有限公司
英語名:Sensah Smart Sports Equipment CO.,LTD
住所:广东省佛山市顺德区伦教工业区乐歌创业园B栋4楼
Web: https://www.sensahsmart.com/
SENSAHの特徴
SENSAHの製品の特徴は、SRAMとSHIMANOが混在したようなデザインですね。
また、多くの中国メーカーの製品と同様に、他メーカーの同等の性能の製品よりもかなり安い価格で提供しているのも特徴でしょう。
ロード用コンポーネントのハイエンドモデルEMPIRE POR(12速)などのカーボンを採用したコンポーネントがあるのですが、なんと4万円前後という、驚異的な価格になっています。
製品ラインナップはロードバイク用、マウンテンバイク用、フォールディングバイク用で、ロードバイク用は12速、マウンテンバイク用は13速に対応したコンポーネントが開発されています。
SENSAHの製品の購入先
以前はAliexpressかAmazonの輸入業者から購入するくらいしか入手できる手段がありませんでしたが、2021年初頭ごろからHyperHolicという会社が日本の代理店になったようです。
ただし、安くてそこそこ性能の良い中国製品を販売する代理店が日本にできたとしても、価格がやたらと高くなってしまうというありがちなパターンのようで、価格的にはちょっと高めの設定になっているようです。
中国の価格をそのままとは言わずとも、関税や送料、多少の手数料を上乗せする程度で販売してくれればよいのですが、設定された価格が高いと、代理店ができたとしても結局は個人輸入やAmazonで安く出品されているものを購入するというようなことになるかと思います。
SENSAHの製品ラインナップ
Photo via:https://www.sensahsmart.com/khal
SENSAHの製品ラインナップは、ハイエンドグレードから一般車用まで幅広く展開されています。
どうせならハイエンドグレードのEMPIRE PROやEMPIREシリーズを選択がおすすめでしょう。
カーボン製でありながら、SHIMANOのTiagraと同じくらいの価格になると思われるので、驚異的な安さです。
ちなみにカセットスプロケットなどはSHIMANO製と互換性があるようなので、ギアの枚数さえ合っていれば問題なく使用できるものと思います。
そのため、SENSAHの製品を組み込む場合には、シフトレバーとフロントディレイラー、リアディレイラーの3点のみだけで、クランクセットやスプロケットに関してはSHIMANO製を使用するのが一般的によくあるパターンのようです。
実際、SENSAHのラインナップも、シフトレバー、フロントディレイラー、リアディレイラーの三点セットが基本になっています。
ロードバイク コンポーネンツ
EMPIRE PRO
12速に対応したロード用コンポーネントでSENSAHのハイエンドモデル。
シフトレバー、リアディレイラーにはカーボンが採用され軽量化がされています。
EMPIRE
11速に対応したロード用コンポーネント。
シフトレバー、リアディレイラーにはカーボンが採用され軽量化がされています。
TEAM PRO(シフトレバー)
SHIMANO 105と互換性のあるシフトレバー。カーボン製とアルミ製。
PHI
10速対応のシフトレバー、リアディレイラー、フロントディレイラー。
OVANTVM(シフトレバー)
SHIMANO Tiagra(4700シリーズ)と互換性のあるシフトレバー。
IGNITE
9速対応のシフトレバー、リアディレイラー、フロントディレイラー。
PEFLEX
8速対応のシフトレバー、リアディレイラー、フロントディレイラー。
SENSAH R7
7速対応のシフトレバー、リアディレイラー、フロントディレイラー。
グラベルロード用コンポーネンツ
SRX PRO(シフトレバーとリアディレイラー)
11速対応のIXIIと12速対応のIXI2S
マウンテンバイク コンポーネンツ
ARX
13速対応のマウンテンバイク用コンポーネントのハイエンドモデル。
XRX
12速対応のマウンテンバイク用コンポーネント。
RX12
12速対応のマウンテンバイク用コンポーネント。
CRX PRO
11速対応のマウンテンバイク用コンポーネント。
RXII PRO
11速対応のシフトレバー、リアディレイラー、フロントディレイラー。
RX11
11速対応のシフトレバー、リアディレイラー、フロントディレイラー。フロント3速に対応。
RX10 PRO
10速対応のシフトレバー、リアディレイラー、フロントディレイラー。
MX10
10速対応のシフトレバー、リアディレイラー、フロントディレイラー。フロント3速に対応。
MX9
9速対応のシフトレバー、リアディレイラー、フロントディレイラー。フロント3速に対応。
MX9-C
9速対応のシフトレバー、リアディレイラー、フロントディレイラー。フロント3速に対応。
MX9-A
9速対応のシフトレバー、リアディレイラー、フロントディレイラー。フロント3速に対応。
MX8-C
8速対応のシフトレバー、リアディレイラー、フロントディレイラー。フロント3速に対応。
MX8-A
8速対応のシフトレバー、リアディレイラー、フロントディレイラー。フロント3速に対応。
MX7
7速対応のシフトレバー、リアディレイラー、フロントディレイラー。フロント3速に対応。
フォールディングバイク コンポーネンツ
RX412
フォールディングバイク用5速シフトレバー、リアディレイラー。
IXII 2XIIS
12速対応のシフトレバー、リアディレイラー、フロントディレイラー。
IXII 2XIIS PRO
11速対応のシフトレバー、リアディレイラー、フロントディレイラー。
IXI0 2XI0S PRO
10速対応のシフトレバー、リアディレイラー、フロントディレイラー。
IX9 2X9S
9速対応のシフトレバー、リアディレイラー、フロントディレイラー。
IX8 2X8S
9速対応のシフトレバー、リアディレイラー、フロントディレイラー。
中華製品を使用する際の考え方
機械の向上で製品の質が向上
個人的に中国製品に関わることが多いのですが、一昔前と比べると大幅に品質が改善され、2016年あたりから、中華製品の品質が急激に上がってきていると感じることが多くなってきました。
いろいろな要因があるとは思いますが、製造機械の進歩などが大きく影響しているものと思います。
なので、自転車製品に限らずで、中国から新興メーカーが多数出てきているような状況で、いずれの製品も有名マーカーと比べて遜色の無いような品質の製品が増えてきています。
特に、以前から中国製品では下地のあるカーボン系の製品については、品質の改善と進化が顕著になっています。
例えばICANなど、格安ながら評価の高いメーカーが出てきているのです。
SENSAHも2016年前後から頭角を現してきた中華メーカーの中の一つだと思います。
モノ作りの考え方の日本と中国の違い
一昔前に比べて品質が格段に良くなった中国メーカーですが、中国と日本とでは「モノ作り」の考え方が根本的に違うので、日本人の感覚からすると「本当に良い」と思える品質の製品は少なく、あくまで「価格の割に良い品質」というようなものであるというところがポイントになるかと思います。
驚異的な安価価格も、そのあたりが理解できれば「なるほどね」というところでもあるのです。
中国製品でも、ある程度の品質は保たれていますが、品質管理についてはかなり曖昧な印象です。
「当たり」の製品を手に入れられれば「低価格でも信じられないほど高品質」と思うこともあれば、「ハズレ」を引いて「有り得ない部分が折れた」などの従来までの中華品質を露呈するようなこともあったりします。
あと、細かい部分を粗探しすれば、あまり人が気にしないような部分で手を抜いている感じがするのも中国製品の特徴と言えるでしょう。
実際のところで「そんな細かいところは性能に影響しないしコストをかけなくて良い」という割り切り方が多くの中華メーカーの考え方で、余計な加工をしない分「価格が安くできる」という方向への舵切りをしていたりするのです。
SENSAHが多くの中華メーカーと同じような考え方かどうかは判りませんが、中華メーカーの製品を使用する際には、日本との基本的なモノ作りの考え方の違いを理解してからの方が良いかと思います。
低価格は中華製品の最大の魅力
実際問題で、中華メーカーというところで信頼性については不安要素はあります。
しかし、よっぽど酷い品質の不良品レベルの場合は、交換などで対応してくれる場合がほとんどです。
多くの人にとって安い価格はには絶対的な魅力があるので、中華カーボンフレーム、ホイールなどでバラ完を目指す人にとっては、魅力的な製品であることは間違いないと思います。
問題は、製品の評判が良いと言っても、あくまで「価格に対しての品質が良い」というところであって、日本のメーカーに求められるような品質とはまた違います。
なので中国製品を購入する場合には、品質には過度に期待せずに、多少の粗や不都合には目をつぶるくらいの気持ちで購入した方が良いでしょう。
「値段相応の品質を想像していたら、思ったよりも良いものが届いた」と思った方が、同じものを手に入れるにしても、過度な機会をするよりも幸せになれるはずです。
そんな感じで、中国製品と付き合える余裕のある人にとってはきっと良い選択肢になるのかなと思います。
とにもかくにも、三大コンポーネントメーカーの牙城を崩すべく、新たなメーカーが参入してくることは自転車業界にとっても良いことだと思うので、今後の展開も含めて注目していきたいメーカーです。